私が過去に見た芝居の中でかなり印象に残っている芝居に、劇団四季の「李香蘭」がある。これは日中友好の証として中国人の夫婦の養女に出された日本人の少女が、満州で人気歌手となり、やがて始まる戦争の陰謀に巻き込まれる悲劇を描いた芝居である。
再演を見るたびにボロボロに泣かされる芝居ではあるが、それ以上に、一人一人の人間劇、友情の在り方にたまらない気持ちにさせられる。
「国って、政府って一体なんだろう?」
そんな疑念が頭をもたげる。
この作品「南京路に花吹雪」は、第二次大戦中の上海を舞台に、日本の国策にはまることが出来ず上海へ左遷された日本人新聞記者本郷が、中国人との交流のうちに日本軍の謀略に気付き、その偽善をあばく立場となっていく姿を描いている。
この作品の中で焦点となるのが、「李香蘭」と同じ、「友情・友愛」である。
それは個人と個人の間に結ばれる、最も基本的な信頼関係。
そして、それ故に主人公本郷は組織そのものの狂いに気づき、人間の愛情の在り方から国の在り方を探っていく。
決して「始めに国ありき」ではない。
本郷の黄子満(ワン・ツーマン)との友情(と言えるかどうか分からない複雑な思いだけれど)が、彼の目を開いていく。一対一の関係がすべてを切り開く鍵となる。
そうして育まれた関係は、やがて巨大な国策に飲み込まれ、ゆがめられていく・・。
黄子満は消える。本郷からも、誰の目からも、永遠に。
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