今日、人形作家天野可淡の人形展を見てきました。
御徒町の地下駐車場を改造したとみられる会場は、おそらく今回の展示会の協賛者である「人形屋佐吉」の持っている物件か。入り口から喪中のような白と紫の生地が張られているが、その中に釣り下がった明かりはインドネシア風の飾りがついている。無国籍。
なだらかな入り口スロープを下っていくと、洞穴のように暗い会場へ。かなり広い。
冷たい雨にもかかわらず、中は盛況。といっていいのかどうか、誰もが黙してじっと佇み、椅子に腰掛け、人形に魅入られている。
真鍮の枠のついたガラスケースに入った小さな人形たちが会場中央の一線上に配置されている。
「こんなに小さいんだ。。」
可淡ドールを初めてみる私は、おどろく。けれど、小さくてもまごうかたなき、魔性の器。。
尖った唇からは蛇が這い出ても不思議ではない。ガラスの目に漏れいるかすかな会場内の明かりは、けれど可淡ドールのどの一体にも命など吹き込みはしない。
右手に移動して、等身大の大きな少女の人形。ビスチェとペチコートのような柔らかい生地の衣装を身に付けて、うつむいている。よくみると、手の指の関節ひとつひとつ、足の指の関節ひとつひとつが球体関節で繋がっている。
年月が無情に人形の関節を腐食していっているのが分かる。むき出しの針金が、より人形の「死」を際立たせる。
進んでさらに右手の奥に小さな部屋がある。
入ると、外で大音量で流れていたバロック音楽が突然弱まる。
目にした人形に唖然とした。
天使を意図したのかどうかは分からない。
ただ、跪いた細い肉体。むき出しのかぼそい曲線を描く後頭部の下、ふたつの肩甲骨からすいと伸びた羽は朽ちている。
飛びたくとも飛べないように、肩を落とした全身から、叫び声が耳の奥を振動させるような錯覚に襲われる。
更に部屋を移動していくと、オルゴールの流れる部屋の中、黒いレースのビスチェと黒いストッキングのみを身に付けたすべて露な少女が私を惹きつける。
その身体つきのすごさ。
無駄なもののついていない、筋肉と骨のみで構成された身体。臀部と腹部の肉付きだけが性的で、奇妙な生々しさを醸す。この人形の表情にたまらなく惹き付けられた私。もっとも私の所有欲をそそった。
katan_preview1
最近のコメント