北の海辺の街の女子高。たまたま同じクラスになった遠藤に、桐島は強く惹かれている。少しずつ、少しずつ二人の距離が埋まるごとに積もっていくもうひとつの感情。。思いが通じることの幸福と哀しみを同時に描いた作品。
正直にいえば、この「blue」を最初に読んだときに感じたのは、
「またこれか。。」
という印象だった。
「また」というのは、「また恋愛と友情の履き違えバージョンか」という感覚。そういう風に同性愛を扱った作品は悲しいかなまだまだ多い。最初に読んで数年たって読み直して、けれど少し私は認識を新たにした。
「ホットロード」という作品がある。紡木たくという漫画家が描いた青春のバイブルのような漫画。これに通じるものを「blue」に感じ取っている。
ただただ、心を、心これひとつを大事にすることが出来た時代。あるいは私はこのふたつに共通する「あの時代」という過去形に抵抗があるのかもしれない。最近読み返して感じたのは、おそらく作者の意図はそのまま、「過去」を過去として描くこと。。。確信犯なんだろうということがはっきりと見えた。
そう考えて読み直すと、そこここに「ノスタルジー」がにじみ出ている。
恋人がこの作品の舞台にとても近い地域の出身らしく、読んですぐに舞台となった高校まであててみせた(笑)。そのことは、(言葉も含めて)描写がリアルであるというよりもむしろ、あの時代のあの空気を描くことに作者がこだわった結果なんだろう。。
正直に書けば、いまでもこの作品を「好き」とは言えない。
その理由は、この作品が描いたものがあくまで「ノスタルジー」であり、リアルな痛みではない点。これを読んで、キャラクターたちと同年代の少女たちはきっと、私たちが感じるのと同じ「懐かしさ」を作品中に見い出す。どの年齢のどの少女たち(もと少女たち)が読んでも同じ温度で感じる切なさ。
吹き出しひとつで風の強さと冷たさを伝えることができる構成力。
それがこの作品の魅力なのではと思う。
魚喃キリコのファンサイト。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/nananan/
おそらく一番情報が充実したサイト。作品についても未収録作品から巻末コメント集までカバー。
漫画時代レビューというサイト内で魚喃キリコのコミックスを全作品レビューしています。
blueの映画化にたずさわったにいがた映画塾というサイトに主演の市川実日子さんのモスクワ映画祭受賞のニュースが掲載されています。
PiC Internet Magazineというサイトの魚喃キリコインタビューでblueについても語っています。うーん。。しかしこれって言い過ぎでは。。(汗)
ヘテロソフィアというサイトにレビューが載っています。この親サイトそのものも、ヘテロ「異」ということをテーマにあらゆるジャンルの気になるものを集めたコアな趣味サイトで面白いです。
(1997年4月刊・マガジンハウス)
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