私が好きな作家に中山可穂を挙げる理由はいくつかありますが。。
最近自分で分析していて発見したとってもシンプルな理由をあげてみます。
1. 女性同士の愛を描いているから
2. 女性同士の愛がぶつかる社会的な軋轢を描いているから
3. 他の作家が描かない「タチ」の匂いを描くから
3番目の理由を見て、ヨルがひっくり返っている姿が目に浮かぶ(爆)。
すごーくおかしいんですが、私は実世界のビアンが言ういわゆる「タチ・ネコ」という分類は苦手です。なんじゃそりゃというのが正直な気持ち。
でも、一方でそういう人たちが多いのも事実。
そして、そういう世界はAVでしか描かれていない。ゆえに私はますます「タチ・ネコ」から遠ざかりたくなります。
中山可穂が描いているのは正確には「タチ・ネコ」ではありません。文章中にそういう言葉は一切入ってきませんし、むしろ彼女が好んで描くのは「ジゴロ」だったり「女たらし」だったり。。。けれど、実はこういう女が二丁目でモテル女の一タイプだったりする。
そういう、第一線の作家が「AV的ステレオタイプはまずいだろう」と避けて通るような一側面を、身に染み付いているがゆえに描かずにはいられない率直さを持って描くのが中山可穂です。
だから、私は現在の彼女が描くヘテロセクシャルには何の興味ももてません。
染み出るものが何もないからです。
けれど、これは実はものすごーーーく怖いパラドックスです。
上に書いたとおり、彼女が同性愛者だから生きる書き方であり、そうであることに甘んじているともいえるんです。
もし中山可穂が同性愛者でなかったら。。。。。。猫背の王子や感情教育は、単なる欲求不満レズビアン願望な中年女のエロ小説に成り下がると思います。
そこが、ファンとしてはとっても怖いんです。。。
レズビアンの中山可穂が、自分の抱えている葛藤をそのままにただただ小説の中にぶつけ続けてきた。
その叫びは、救いがないゆえに世の人々に受け入れられ、一部の熱狂的ファンに愛されている。
私はこの熱狂的ファンの半分は上に書いた「欲求不満レズビアン願望」と、「不倫志願」「ロミオとジュリエット症候群(?)」「禁断のなんちゃら好き」だと思ってます。
彼女ら彼らが中山可穂を好きな理由は、確かに彼女の小説が痛みに酔っている部分に負うところが大きい。彼女の小説はあまりにも痛みを訴えすぎることでヘテロ社会へ一種の「痛み=ロマン」という幻想を与えてしまってるように思います。。
「痛み」
が無ければ、決して中山可穂を彼女らは愛さないでしょう。
私もまた、中山可穂の「痛み」を愛しています。けれど、それ以上にその「痛み」をいかに克服するのか、その過程により興味を抱いているんです。。
私が中山可穂の新作が出ると毎回われを忘れてはまりこむのは、その小説の「痛み」ゆえだというのを否定はしません。
けれど、後半でいつも私はコケル。こけてしまうのは、おそらく中山可穂自身がその痛みとどうつきあってゆくのか、あるいはその痛みをどう和らげて行くのか、その方法を見出していないからなのかどうか。。そもそも自身と小説がごっちゃになってるのがいけないのか(笑)。。。ぐるぐる回ってしまいます。
私が中山可穂という作家の作品に求める一番のもの。
それは、感覚の共有です。
すごく簡単に表現するなら、それは
「そうそう。こういうことあるんだよね」
というような共感。
ヨルも書いていたけれど、それ(共感)すら持てない小説が多すぎる。。。中山可穂の描く恋愛には、確実に私が、あるいは私の恋人が、友達が経験した過去の感情が濃縮された形でとどまっていたりします。
そして、作家の嘆きがそこにある。
私はそういう嘆きを読みながら一緒に感じるんです。
中山可穂の描くものは、圧倒的に「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「官能」が多くて、そういった激しい感情の渦を、まさに追体験する感覚。自分でも身に覚えのあるその苦しさを再確認するというか。。
けれど、中山可穂の描くものはネガティブなベクトルに傾きすぎるきらいがあって、そういうものをかき集めると「切ない」を欲しがるひとたちの恰好の餌になってしまったりするわけです。
手に届かないものを追い求めるのが中山可穂の描く恋愛なのだとしたら、私はもうそろそろ卒業したいと思ってます。。でも、弱法師に、ほんのすこしそれから離れそうな予感(予感だけだけど)がして。。。まだやっぱり新しい作品が出たらむさぼり読んでしまうだろうなと思ってます。
「弱法師」には不満は色々ありますが、彼女のもがいたあとが見えます。
今のところ、私の中山可穂ベストに入ります。
ケッヘルの連載が中断されているのがとても気になりますが。。。
と、ここでヨルの書き込み読んだ。
落としたのは(ケッヘルでは)まだ一回よん。隔月だから二回落としたような錯覚を起こすが。。。。10月発売のには載ってるかしらねえ。。。不安。
reason_nakayama
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