水のそばへやってきて、ほとりに宿る。
父は病床、母は横に、水は絶え間なく流れてゆく。
枕をならべて同じ天井ながめながら、母がぽつりとつぶやく。あなたたち、ずっと二人で暮らしてゆくつもりでいるなら、小さな家でも買ったら。
頭金貯めないとね、茶化すあたし。母が寝息を立て始めたころ、じわりと感じる。
山ほどの確執と衝突と、痛みと。どれも腹に貯めたまま、でもやはりじわりと浸透する。
諦めでも、黙認でもなく、あたしの恋人をあたしの人生の伴侶と思っているのだと伝える言葉。母にそのつもりはなくとも。
ことあるごとに否定されながら、ときに泣き喚きながら十五年かけて伝えてきたことが、ようやく母の身体に染みわたりはじめているのだろうか。
家、というものがあたしにとって何を意味するのか、あたしはしばらくまた、考えるのだろう。
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