あたしは祖父の語る物語で育った。
幼い少女の夏休み、孫たちが集まる山間の家で語られる怪談話に、怯えながらも興味を惹かれてひたすらもっともっととせがんだ思い出があたしを育てた。
ロイのお話は壮大でどこまでも広がり、薬をくすねるためのご褒美としてのお話だったとしても、少女アレクサンドリアを惹きつけるに充分すぎる魅力があったのは、容易に想像できる。彼女はオレンジを摘むためのただの労働力。わずか五歳でも。そして五歳の少女は物語に飢えていたのだ。子供はみな、物語に育てられるべく生きている。
映像美については、それほどに強く惹かれたわけではない。むしろ鮮やか過ぎる色合いは好みからは少し外れており、シェルタリングスカイの退廃美のほうがむしろ完璧と思える。
あたしの好きな水のモチーフで始まり、病院という閉じられた世界で繰り広げられる「語り」と、年の離れた人たちの交流。それも心の。あたしはそういう触覚と聴覚から呼び起こされるファンタジーに常に常に引き込まれている。心が一番感じやすい。のは言うまでもなく。
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