さっそく新刊を買ってきました。中篇と書かれていて、ああ、そういえば結構長い作品集だったなと思い返しました。
収録作品は、昨年別冊文芸春秋に不定期連載していた作品。
「弱法師」
「卒塔婆小町」
「浮舟」
の三篇。
最後の「浮舟」も能に題材とってたんですね。。無学で知らず、「どういうコンセプトの連載なんだろう」と悩んでしまっていた(汗)。
能楽としては、最初の「弱法師」しかちゃんとは知りません。本来は全部の能を知ってから読んだほうがより深い味わいがあるように思うのだけれど。。
三作品、これまでレビューに書いたとおり、連載されていたときは決して私は「大好き」と言える作品群ではなかったのに。。
こうしてまとめて本になって読むと。。どうにもやっぱりハマってしまう。。のはなぜかしら。。
「弱法師」を経て、今読んでいるのは「卒塔婆小町」。
老婆が過去を語り始めたあたりだけれど、すでにどっぷりと可穂ワールドにトリップ中です。
語り口が私を引き摺り下ろす。
心臓をぐしゃりと指で。。。暖かい指で握りつぶされるような。。そのくらいの「血」を感じてしまうのです。中山可穂の作品には。
マラケシュ心中を結果として好きな作品とはいえないにも関らず、やはり読んでいる最中ははまってはまって抜けられない泥沼にもがくような苦しみを与えてくれていた。。。好きな作家、嫌いな作家、多々あれど、こんな苦さと甘さ、痛みを与えてくれるのは結局中山可穂しかいないのです。。。私にとっては。
通勤の地下鉄に揺られながら、無表情な人波の中で、一冊の本に、一文字一文字に引きずられ、揺さぶられ、瞬きを忘れて目が痛くなるほどの無我夢中を私の中から引き出す。。。そういう作家の本をリアルタイムで読めることは、やっぱり幸福なんでしょうね。。
大好きで大嫌い。大嫌いで大好き。
読者として無責任に読み浸れる自分は、平和な証拠なのかな。
どうか、この幸福が続きますように。。
そう一瞬一瞬願いながら、舐めるようにページをめくる私です。
とりあえず今、この一冊を堪能します。
(中山可穂「弱法師」・文芸春秋社刊・2004年3月)
yoroboshi_shinkan
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