アリス・ウォーカーの詩「gray」を私なりの読み方。
http://www.math.buffalo.edu/~sww/poetry/walker_alice.html#gray
グレー
私の友人の一人が
灰色に変わってゆく
髪だけではない
なのになぜそうなるのか
私には分からない
ビタミンEが足りないの?
パントテン酸、それともB-12が原因?
あるいは、ひとりぼっちで忙しくしていたせい?
「誰かを愛するようになるのにどのくらい時間がかかる?」
と私が彼女に尋ねると
「ほんの一秒ね」と彼女は返す。
「じゃあどのくらいの時間愛し続けるの?」
「そうね、二、三ヶ月までだわ」
「じゃあどのくらいの時間があれば相手を忘れられる?」
「三週間」と彼女は言う
「最高でもね」
こう言ったら驚くだろうか
私もまた、灰色になってゆくのだ
なぜなら私はこの女性に「焦がれて」いるから。
愛についてこんな風に考える女性のことを。
- アリス・ウォーカー
女性が女性を愛するということを、肉体と精神の両方から単純に描いた詩。
アリスウォーカー自身は自分のセクシュアリティをどうというふうに表明することはない。
「カラーパープル」を出版したことから単純に「レズビアン」というラベルを貼り付けられて苦労したようだけれど、そのラベルごと偏見を取り除くことのほうに興味があったのだろう。なんと言われても「否定」も「肯定」もせずに淡々と詩を描き、文章を著してきた。
「勇敢な娘たちに」では、彼女の娘の恋人の女性たちについて折々に触れている。
当然ながらその性別が社会的多数にとって問題になることにはほとんど触れないし、彼女が興味を持っているのが恋人たちの性別という「器」ではなく一人一人の持つ資質であることは疑いがない。
上の詩「グレー」では、女性に焦がれる女性の置かれる立場への不安感と、悦びを「灰色になる(turning gray)」という言葉に託している。
人を愛して不安になることは、同時に喜びにも繋がる。
単純な愛などない。
alice_walker_gray
最近のコメント